セーターを脱いだ瞬間、髪がボワッと膨らむ。マフラーを外すと、毛先が顔や服にパチパチ張りつく。
冬にだけ起きるこの広がりは、髪が乾いているときにしか起きません。
夏に広がるのは、髪が空気中の水分を含んでふくらむからです。冬に広がるのは、その逆で、乾いた髪が電気を帯びてバラバラに散るからです。季節によって、広がる理由がまったく違います。
(雨や湿気の日に広がるほうが気になる方は、こちらが本題です → 湿気で髪がうねる原因と対策7選)
この記事では、冬の静電気で髪が広がる理由と、今夜からできる対策をまとめます。
1. 静電気で髪が広がるとき、髪に何が起きているのか
髪どうしが「反発し合っている」状態
こすれたものどうしの間では、目に見えない電気が生まれます。髪も同じで、服やマフラー、ブラシとこすれると電気を帯びます。
このとき、近くにある毛は同じ性質の電気を持ちます。 そして同じ性質の電気どうしは、お互いに離れようとします。
だから、毛が一本ずつバラバラに立ち上がる。膨らんでいるのではなく、散っているのが冬の広がりです。
夏の広がりは「束のまま太くなる」ように見えるのに、冬の広がりは「細い毛が輪郭からピンと飛び出す」ように見えます。見え方が違うのは、起きていることが違うからです。
水分があると起きない
電気は、水分を伝って逃げていきます。
空気が湿っていれば、髪に電気がたまる前に外へ逃げていきます。だから梅雨の時期に静電気で困ることは、ほとんどありません。湿度が下がる冬にだけ起きるのは、このためです。
つまり静電気は、体質でも髪質のせいでもありません。乾いているという条件が揃ったときにだけ起きる現象です。

2. 冬に静電気が起きる3つの条件
起きるときは、だいたい次の3つが重なっています。
① 空気が乾いている
冬は外の空気も乾いていますが、もっと乾いているのは室内です。
暖房をつけると、部屋の湿度は大きく下がります。家、オフィス、車の中。一日のうち長くいる場所ほど暖房が効いていて、髪はそこで乾いていきます。
「外より、室内に入ってからのほうがパチパチする」と感じたことがあれば、それはたぶん気のせいではありません。
② 髪そのものが乾いている
髪はもともと、空気中の水分を少し抱えています。この水分が少ない髪ほど、電気を逃がせずにためこみます。
そして、表面が傷んでいる髪は水分を保ちにくいので、そのぶん乾きやすい状態にあります。
ただし、傷みの話をここで深く扱うと別の記事になってしまいます。「一日中パサついている・毛先がゴワつく」という自覚があるなら、そちらはこの記事より先に読んでいただきたい内容です。
③ 摩擦が起きている
電気は、擦れることで生まれます。冬は擦れる機会が一気に増える季節です。
ニット、マフラー、コートの襟、帽子、そして乾いた髪をとかすブラシ。枕も毎晩擦れています。
素材によって起きやすさも変わります。
| 起きやすい条件 | 起きにくい条件 |
|---|---|
| 空気が乾いている(暖房の効いた室内・車内) | 空気に湿り気がある |
| 髪が乾ききっている・水分を保ちにくい状態 | 髪に水分と油分が残っている |
| ウール・アクリル・ポリエステルの衣類 | 綿・シルクの衣類 |
| 乾いた髪をプラスチックのブラシで何度もとかす | 手を湿らせて撫でる・とかす回数を減らす |
3つとも「体質」ではありません。条件です。 だから、外せるところから外していけば状態は変わります。
3. あなたの広がりは静電気?それとも別の原因?
ここがいちばん大事なところです。冬の広がりを全部「静電気」と思っていると、対策がずれます。
静電気は一時的な現象です。条件が揃った瞬間だけ起きて、条件を外せばその場で収まります。逆に言えば、一日じゅうずっと広がっているなら、それは静電気ではありません。
| 見え方 | 起きていること | 読むべき記事 |
|---|---|---|
| 服を脱いだ瞬間だけ膨らむ/夕方だけパチパチする | 静電気(この記事) | — |
| 一日じゅう広がっている・毛先がゴワつく | 傷みによる広がり | 髪がパサつく・ツヤがない原因は? |
| 雨・湿気の日に膨らむ | うねり | 湿気で髪がうねる原因と対策7選 |
| 根元から浮く・前髪だけ気になる | 根元のクセ | 前髪がうねる・浮く原因は根元にある |
いくつか当てはまることもあります。その場合は、一日中続いているほうが土台の問題だと考えてください。静電気の対策だけをしても、朝から広がっている状態は変わりません。
4. できること/変えられないこと
正直に線を引いておきます。
変えられないこと
- 冬の空気そのものの乾燥
- すでに傷んでしまった部分が、水分を保ちにくいこと
この2つは、どうにもなりません。冬が来れば空気は乾きますし、傷んだ部分を元どおりにする方法はありません。
できること
- 髪の側に水分と油分を残しておくこと
- こすれる回数と強さを減らすこと
- 電気を逃がしてやること
この記事の対策は、全部この3つのどれかです。
そして、ここははっきり書いておきます。静電気をゼロにすることはできません。 目指すのは「起きにくい状態にしておく」ことです。ゼロにはできないけれど、パチパチする回数や広がり方は、条件を外していくほど落ち着いてきます。
5. 今日からできること4つ

① 夜、根元まで乾かしきる
いちばん効きます。そして、いちばんやっていない人が多いところです。
「乾かすと乾燥するから、半乾きで寝たほうがいい」と思っている方がいますが、逆です。濡れたまま放置されているほうが、表面がふやけて負担になります。
やり方はシンプルです。
- 温風で、根元から乾かす
- ドライヤーは15〜20cm離して、一か所に止めず動かす
- 全体が乾いたら、最後に冷風を当てる
髪は冷めるときに形が決まるので、冷風は仕上げにだけ使います。最初から冷風で乾かすのではありません。
順番やコツはこちらに詳しく書いています。
② 乾かす前にアウトバストリートメントをつける
洗い流さないトリートメントのことです。髪の表面に油分が残っていると、そのぶん乾ききらず、こすれもやわらぎます。
当店で使っているものだと、冬はこの2つをお勧めしています。
| どんなもの | ミディアムの目安 | |
|---|---|---|
| オージュア ミラジェリィエッセンス | しっとりめ。乾きが気になる方に | 2プッシュ |
| アルタイム リペア ミラクルヘアトリートメント(ミスト状) | 軽め。重たくしたくない方に | 6~8プッシュ |
同じ「ミディアム」でも量がまったく違うので、そこだけ気をつけてください。ミラジェリィは少量で足ります。アルタイムのミストは軽いぶん、思っているより多めに使って大丈夫です。
つけるのは毛先中心。根元につけるとぺたんこになります。そして、乾かしたあとではなく乾かす前につけてください。
(オージュアはサロン専売のものなので、購入は取り扱いのあるサロンでどうぞ。ネットで安く出ているものは、状態がわからないのでお勧めしていません)
③ 手ぐしとブラシを見直す
冬にやってはいけないのが、乾いた髪を何度もとかすことです。とかすたびに擦れて、そのたびに電気が生まれます。整えているつもりで、広げています。
④ 部屋の湿度を上げる
空気に湿り気があれば、電気は逃げていきます。
加湿器があればいちばん簡単ですが、なくてもできることはあります。濡れたタオルを部屋に干す。洗濯物を室内に干す。それだけでも空気の状態は変わります。
数字で「何%にしてください」とは言いません。部屋にいて乾いていると感じるなら、それは髪も乾いています。 その感覚を目安にしてください。
6. 帽子・マフラーでペタンコになる/広がる
冬にもうひとつ多いのが、「帽子を脱いだら根元がつぶれていた」という悩みです。
これは静電気とは別の話で、根元が押さえつけられたまま形が決まってしまった状態です。毛先をいじっても戻りません。
応急処置はひとつだけ覚えておけば足ります。根元だけを湿らせて、手で起こしながら乾かす。 毛先を濡らす必要はありません。押さえつけられていた場所を、濡らしてやり直すだけです。
根元の浮き・つぶれについては、前髪の記事にまとめています。
7. 美容師の視点:冬に静電気の相談が増える人の共通点
サロンで「冬になると広がって困る」と言われる方には、はっきりした共通点があります。
髪が細い方です。
これは、私がサロンで実際に見てきた範囲での実感なので、すべての人に当てはまるとは言いません。ただ、冬にこの相談をされる方は、かなりの割合で髪が細い方です。
理由として考えられるのは、一本あたりが軽いということだと思っています。細い毛は重さで下に落ちる力が弱いので、少し電気を帯びただけでも簡単に立ち上がります。太い髪なら重さで押さえられる分が、細い髪では押さえられません。
同じ量の電気が起きていても、動いてしまうかどうかが違うのだと考えています。
なので、細い髪の方は「自分の対策が足りないせいだ」と思わなくて大丈夫です。もともと動きやすいだけです。そのうえで、この記事の①②(乾かしきる・アウトバス)を押さえておくと、冬の扱いやすさは変わってきます。
髪質そのものについて相談したい方は、こちらもどうぞ。
よくある質問
Q. 静電気が起きやすいのは、髪が傷んでいるからですか?
関係はあります。表面が傷んでいる髪は水分を保ちにくいので、そのぶん乾きやすく、電気もたまりやすい状態になります。
ただし、傷んでいない髪でも空気が乾いて摩擦が起きれば静電気は起きます。「静電気が起きる=傷んでいる」ではありません。
一日中パサついている・毛先がゴワつくという自覚がある場合は、そちらのほうが土台の問題です。
Q. 加湿器がなくてもできることはありますか?
あります。濡れたタオルを部屋に干す、洗濯物を室内に干す、といったことでも空気の状態は変わります。
髪の側でできることのほうが、じつは即効性があります。手を少し湿らせて撫でる。 これだけでその場は落ち着きます。加湿器が届くのを待つ必要はありません。
Q. 静電気防止スプレー(衣類用)を髪に使ってもいいですか?
衣類用のものは、髪につけることを想定して作られていません。頭皮にもかかりますし、お勧めできません。
髪に使うなら、髪用のもの(洗い流さないトリートメント)を使ってください。目的は同じで、髪の表面に水分と油分を残しておくことです。
Q. 髪をまとめて結んでおけば静電気は防げますか?
「起きなくなる」わけではありませんが、広がって見えにくくはなります。
結ぶと毛が束としてまとまるので、一本ずつ散るのが目立ちにくくなります。マフラーとの摩擦も減ります。
ただし、きつく結んだり、ゴムの位置を毎日同じにしたりすると、そこがこすれます。ゆるめに、位置を変えてが基本です。
Q. 縮毛矯正やトリートメントをすると静電気は起きにくくなりますか?
正直に書きます。はっきりしたことは言えません。
私の見立てとしては、表面が整ってパサつきが落ち着くと、そのぶんこすれ方もやわらぐので、静電気も起きにくくなる可能性はあると思っています。実際「今年の冬は前ほど気にならない」と言われることもあります。
ただ、それを裏づけるはっきりした根拠を私は持っていません。ですので、「静電気対策のために施術を受けてください」とは言いません。まずはこの記事の4つを試すほうが先です。お金もかかりません。
おわりに
冬の広がりは、髪質のせいでも体質のせいでもありません。乾き+こすれという条件が揃ったときにだけ起きています。
今夜からできるのは、この3つです。
- 根元まで乾かしきる(生乾きで寝ない)
- 乾かす前にアウトバスをつける
- こすれを減らす(乾いた髪をとかしすぎない)
明日の朝ではなく、今夜のドライヤーから変えてみてください。翌朝の広がり方でわかります。


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